しかし、ティンバーフレームの可能性は洋風好みの施主のみにとどまらない可能性を秘めている、、と思う。 結局、ティンバーフレームは、大物木材のボリューム感の復権というテイストを指し示しているからだ。
この点、”住まい塾”を主催されている高橋修一さんの見識はさすがだと思う。 彼によれば、日本の数寄屋造りとは、細い部材をいろいろと刻みの技を駆使するところに特色があるが、しかしこれは、太い部材が入手できず同時に、大工手間のコストが安かった時代には有用であった。
数奇屋に対して、豪雪地域の総ケヤキ造りの古民家は対照的に、部材のボリューム感が最大の魅力だ。そして、同じ軸組み工法でも、ティンバーフレームへとつながるのは、数奇屋ではなくこちらの古民家のほうなのである。
多分、これから日本の軸組み工法の復権はこのような形で進むと思う。すなわち、明治時代に導入された細い部材+筋交い、さらに金具という在来工法とは異なり、太い部材でできるだけ金物を使わない伝統軸組工法への回帰。もちろん、現代の性能とテイストという洗礼を通過した形での伝統軸組みのリバイバルである。
ティンバーフレームとポストアンドビームでは何か違うのであろうか?
ログハウス好きの人々の間では、ポストアンドビームとは丸太をそのまま使いながら、ログのように横において壁を形成するのではなく、柱と梁として使用する工法をいうことが多いから、構造的には同じでありながら、
前者は角材を、後者は丸太を使用するのが違いであると考えることもできる。
しかし、わたしが、より興味を惹かれるのが、同じ角材を使った場合でも、ティンバーフレームとポストアンドビームと呼び分けられる場合の違いだ。
どこかで読んだのだが、ポストアンドビームは文字通り複数の柱の間を梁で連結する日本でもおなじみの工法であるから、家自体の加重はいわば水平に分散される。それに対して、ティンバーフレームではその加重は垂直に流されるとあった。 当然、素人のわたしにはその詳細はわからない。しかし、ティンバーフレームで特に惹かれるのが、Bentの存在である。 このブログ一番最初の記事の写真を見てほしい。家をすぱっと輪切りにしたような軸組みは地面上で組み立てられてから、クレーンで引き起こされる様が写されている。 これがBentだ。
だから、Bentは構造的にそれ自体で独立しており、その加重はBent自体の上から下へ地面方向へと流されることになる。あとは、このようなBentを複数つくり、それを横材でつなぐだけだ。
同じ軸組みといいながらも、このBentを基本単位とするティンバーフレームの軸組みは、日本のそれとはかなり趣を異にする。
ついでながら、わたしがヨーロッパ古民家でお気に入りの急傾斜の屋根。長らくわたしは、なぜヨーロッパでかくも急勾配の屋根が一般的であるのか不思議に思ってきた。 雪が降ったときの落ちやすさを指摘する向きもあるかもしれないが、しかしながら、ヨーロッパは高緯度で寒いが、それほど豪雪地帯ではない。
ティンバーフレームでも、ごく初期のタイプのBentにその秘密はあるのではないか? ハーフティンバー発祥の地英国では長らくオークが用いられてきた。オークは堅く、じょうぶで、美しく、すばらしい建材であるが、広葉樹であるがゆえに、長材をとろうとすると往々にして曲がっている。英語でもGnarled Oakという表現さえあるくらいだ。 白川郷の合掌造りを想像されたい。こちらの大屋根は立ち上がりからは別の垂木で構成されているが、ティンバーフレームの基本単位は、Bentだ。そして、このBentの頂上の部分、つまり屋根に当たるところを別の木材を継ぐのではなく、一番下から一本の材木で構成するとしたらどうだろう? 似たような角度に曲がった2本のオークの大木を対象形に連結すればBentのできあがりである。
わたしの想像が当たっているかどうかはわからない。 しかし、ハーフティンバーはこのような空想の世界へと、折につけわたしを導いてくれるすばらしい触媒でもあるのである。
先日書いたように、真壁作りのハーフティンバーでは断熱材の選択肢が限定されるし、それゆえに種類と厚さの選択が結構難しい。
実は、これはわたしの2軒目のハーフティンバーの建築だ。前回は、柱の太さ20cmのティンバーフレームを選んだだけで満足し、壁の組み方、断熱材の種類などほとんど理解しないうちから契約した。結果的に、途中でいろいろな仕様の変更を余儀なくされ、結果的に施主、ビルダー双方に対して、なかなかたいへんな普請となってしまった。
断熱材は黙っていればグラスウールが用いるのが一番一般的だろう。綿であるから壁の中に詰めるのが簡単。何よりも安い。しかし、断熱性能はそこそこ程度だし、なによりも壁の中が結露するのが怖いから、室内側にポリスチレンの防湿層できっちりと覆う必要がある。 軽井沢という寒冷地で75mm程度のGWでの断熱性能に疑問を感じたわたしは、前回はポリスチレン75mmに変更してもらった。しかし、これが結構難敵であった。
ハーフティンバーの壁は、筋交いなどで細かく分かれているので、ポリスチレンを壁ごとに正確にカットしてはめ込む必要があった。これはかなり面倒だ。さらに、家が建ってから木が痩せて壁との間に隙間があいた。
ポリスチレンは板状であるからぎゅうぎゅうには詰め込めない。だから、木の痩せに追随できなかった。最後は、音の問題だ。壁の持っている役割の中で、断熱はよく理解されているが、意外と無視されているのが遮音性。そして、ポリスチレンの遮音性は、GW、ロックウールなどの綿状断熱材からは大きく劣る。要するに、堅くて空気をそれほど含んでいないからだ。
それやこれやの経験を踏まえ、今回はセルロースファイバーを選択した。そして、経費を抑えるために、ビルダーの知り合いの工場で外壁および屋根パネルを作ってもらい、セルロース断熱業者に工場で吹き込んでもらった。厚みもできるだけとりたかったので、屋根は2x8を用いて約20cm、外壁は2x6の14cmである。この効果で外の温度と音に左右されない室内環境がもたらされることを期待している。
先日ハーフティンバーとティンバーフレームの2つの工法比較で見たように、
ハーフティンバーの構造的特徴に真壁構造があげられる。
そして、真壁工法はとても味がある工法であるのだが、合理的であるとはいえない。
Against all odds,,,
不利であるにもかかわらずこれに挑戦することで、中世的ともいえるハーフティンバーの持つ独特の味が出るのではないかと思うのである。
ハーフティンバーには制約が多いこと、、、これは断熱材においても例外ではない。
真壁であるということは、壁が柱で分断されていて、1つ1つの壁の数が多いことを意味する。
だから、外張り断熱のように、発砲して板状のポリスチレンみたいな断熱材をざーと切って、家の周りにさっと張って、ハイおしまい、見たいに簡単なわけにはいかない。なんといっても、柱に分断されて細分化している壁すべてに断熱材を入れなければいけないから大変なのである。
だから、基本的に発砲系断熱材は向かない。カッターでパネルごとに切って充填することになるが、ウレタン、ポリスチレンなどの断熱材は堅いから、木が経年変化で痩せてきても追随できない。おのずと柱と断熱材の間に隙間ができて、これは断熱欠損となることになる。
また、さらに発砲系断熱材は遮音性、吸音性に乏しい。家が建って実際にすんでみるとわかるが、家の快適性を左右するのに室内の音が過度に反射しなことが必要だ。そうでないと、家族みんなが建てる音がほかの人にすべて筒抜けになってしまい、これはあまり幸福な住環境とはいえない。
となると、吹き込みグラスウール、あるいはセルロースファイバーあたりが、ハーフティンバーに最も適した断熱材といえるかもしれない。
それに対して、北米のティンバーフレームでは構造体を外側に露出することはめったにない。このあたりが非常に合理的であるのが、強力な断熱材を合板ではさんだパネル(ストレススキンパネル)でフレームを外側から覆ってしまうのである。断熱材の厚さも日本でのグラスウール100mmとか、ポリスチレン50mmなどと半端なものでなく、確か150mm以上の極厚である! だから、ティンバーフレームは室内においては木組みを眺められ、それでいて万全の断熱性能を持つ現代住宅の粋ともいえる性能を有する。
し、か、し、である。 当たり前のことだが、ティンバーフレームの外観は味気ない。なぜなら、2x4などとなんら変わりないから... ティンバーフレームに招かれたお客さんは、室内に入り圧倒的な木組みを目の当たりにして初めてびっくり!というわけである。
ハーフティンバーは、合理的でない。柱の間を埋めて壁とするよりも、外側からパネルで覆ったほうが簡単に決まっている。 さらに、木は感想するとやせたりねじれたりするという天然素材ならではの現象もある。すると、
最初はぴったりとはまっていた木組みと壁の間に隙間が開いてしまうこともままある。 これを防ぐためには、柱にしゃくりと呼ばれる切込みを前もって入れておく。柱の中に壁の一部が埋まる形になるので、柱が乾燥して多少痩せても隙間ができないという仕組みである。
このように、ハーフティンバーは、非合理的な面を持っている。それでも、これは壁に浮き出る木組みパターンの不思議な魅力に取り付かれた人間にとっては些細な問題だ。ハーフティンバーを眺めていると時間が止まる。時は一気に巻き戻り、魔女が笑い、小人が庭を駆け、ケルトのドルイドが語りだすのであるから...
